【鶏そばAkari】クラウドファンディングでラーメン屋さんって始められるんですか?

2021-08-23

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「ハヤマさん、クラファンって知ってますか?」

「グラタンなら好きだけど、なにそれ??」

「クラウドファンディング!略して、クラファン!インターネット使った資金調達の手法の一つですよ!」

「ミラノ風なんちゃらってやつでしょ?知ってるよ」

「それは、ドリアです!」

「ベジータに一瞬で倒されたアイツか」

「それは、ドドリア!」


そんな会話をしながら、僕たちは甲府駅の改札を通り抜ける。

左に曲がって、エスカレーターを降りると、南口のロータリーの景色が飛び込んできた。

7月下旬の甲府は、全国でも注目されるほどに気温が高い。


晴れ渡った青空とは対照的に、街ゆく人々の表情は、曇りがちだ。

マスクで顔を覆う日常には、すっかり慣れてしまったけれど、
こうも暑くて息苦しいと、さすがにポーカーフェイスを貫くのは難しい。


こんな日には、山交百貨店のスタバでフラペチーノを買って、
エアコンの効いた部屋でくつろぎたいものだ。

ドリンクのサイズはグランデ。
エクストラホイップ。
エスプレッソショットを追加して、少しビターに、大人目に。

しかし、それは、もはや、思い出の中のお話。


2021年7月29日現在、スタバも、そして、山交百貨店も無くなり、その跡地には、ヨドバシカメラがそびえ立っている。

マスク無しの日常も、山交の曲がるエスカレーターも、徐々に忘却の彼方へ消え去っていくのだろうか。


「あ、そういえば、クラファンで思い出したけど、最近オープンしたラーメン屋さんがあるんだ。行ってみないか?」

複雑な顔をしながら歩くボクに、相変わらず、何気なく、ハヤマさんが声をかけた。

「そうですね、ちょうどお昼ですし、行きましょう」

「じゃあ、こっちね。早く行かないと混みそうだから、汗をかかない程度に早足でよろしく」

刹那にこめかみから頬へ伝う汗の気まぐれは、何度夏が巡っても、変わらない。


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甲府駅から徒歩5分ほどの場所に、そのお店はあった。

平和通りの西側、東横インとファミリーマートの間を東西に走る「ちょうちん横丁」という通りがある。

夜になると、文字通り、ちょうちんの明かりが照らすクラシカルな通りは、居酒屋やバーでを中心に、甲府駅前の夜を彩る賑やかなスポットの一つだ。


「ついたよ」


「あれっ?ここって…少し前まで焼き鳥屋さんだったような…!?」

足を止めた場所に、ボクは見覚えがあった。

「そう、よく覚えてたね。ここは、もともと、『焼鳥燈』って名前のお店だったんだけど、新型コロナウイルスの影響で、お酒メインでの営業が難しくなってね。今年の春にクラウドファンディングで資金調達をして、ラーメン屋『鶏そばAkari』という形で再出発したってわけ」

お店の外には、クラファンの支援者が寄附してくれた『ギフト』の説明があった。

ギフトを使用することで食事代の割引が受けられるようだ。


「本来は、クラファンの対価として支援者が受け取った『ギフト』だろうけど、こういう形で不特定多数向けに提供してくれたことで、お店のスタートダッシュの一助になっているんだろうなあ。いやあ、支援者の皆様には、頭が上がりませんな。まあ、今日の分のギフトはもう無くなったみたいだから、俺たちには関係ないけどね」


店員に案内され、お店の中へ。カウンター席に腰掛ける。


カウンターは8~9席。入店直後に、店の奥の階段から、団体客が降りてきたところを見るに、どうやら2階にも客席があるようだ。


カウンター席は、パーテーションで仕切られ、メニューはもちろん、水、箸、アルコール消毒、お手拭き、ティッシュ等、必要なものがすべて一席ごとに一人分ずつ用意されていた。

コロナ禍において、見知らぬ誰かと何かを共有するのは抵抗があるが、こういったサービス・配慮があることは、とても素晴らしい取り組みだと感心した。


「さてと、何を食べようかな」

ハヤマさんは、早速、例のごとく、メニューに夢中だ。

僕もメニューに目を通す。




店名が如く、メニューは「鶏そば」を中心に構成されている。


味は、鶏白湯、鶏しょうゆ、鶏しおの三種類。

サイドメニューは、鶏そぼろ丼に、からあげ&ライス。…どちらも捨てがたい。

裏面には、信玄鶏のからあげ定食がいくつか。からあげもおススメらしい。




さて、どうしたものか…。


「よし!決まった!!」

隣から元気な声が聞こえた。ハヤマさんのテンションが上がってきたみたいだ。

「ハヤマさん、どれにしました?」


「ここは、お店のイチオシ『鶏白湯』にしよう!あと、鶏そぼろ丼ね!至高の鶏そぼろ丼ってネーミングがいいよね!センスあるわー!」

「じゃ、じゃあ、ボクも同じものにします」

ハヤマさんは、初来店のお店では、無難においしいであろう品を選ぶ。

もし、冒険して、変わり種を選び、その選択が後悔を禁じ得ないものだった場合の落ち込み具合は、常人がお財布を紛失してしまったときのそれを、はるかに凌ぐものがある。

それゆえ、ハヤマさんと同じものを選ぶのが、無難であり、大げさかもしれないが、結果として、さっきの言葉を借りるなら「至高」である。

オーダー後、店内をぐるりと見まわす。

厨房は例に漏れず熱気があり、スタッフは水分補給をしながら作業に当たっている。

オープン直後ということもあり、あっという間にカウンター席は埋まり、各々が悩まし気にメニューを眺めている。

直観だが、白湯、しょうゆ、しお、どの味を選んでも正解だと思う。

隣の席の人が、からあげ&ライスを注文したのを見て、少し心が乱れたボクに気づいてか、

「食べたかったら、また来ればいいんだよ。今、必要なのは、思考じゃなくて至高!今日はあの選択がベストだ!」

と、わけのわからないことをハヤマさんは口にした。


ほどなくして、着丼。

「…美しい」

ハヤマさん、うっとりしながら写真を撮りはじめた。

「お先にどーぞー」

「はい、遠慮無く、いただきます」

ここまでが、いつもの流れだ。

鶏白湯の鶏そばは、白く泡立ったスープの海に、味付け卵とカイワレ・紫タマネギ・鶏チャーシューの小島が点在しているような見た目。

ラーメンというより、パスタに近い印象を受けた。




レンゲでスープを一口。

クリーミーかつ濃厚だが、後味はあっさりしている。

鶏の旨みが凝縮されていて、なんだかクセになりそうだ。

細麺にスープがほどよく絡んで、夏を忘れるくらい、食が進む。



特筆すべきは、トッピングのダブルチャーシュー。

噛みごたえがあり、鶏の旨みがジワジワくる地どりチャーシューと、しっとりじんわり旨みを主張する鶏チャーシューが、唯一無二の存在感を示してくる。


元焼鳥屋のアドバンテージと呼べる特徴的な個性で、この味を求めて来店する人が増えそうな予感すらする。


地どりチャーシューは、鶏そぼろ丼にも使われており、鶏そばのスープを丼にかけて食べても無論、相性は抜群だ。





『甲州地どりの鶏そば』というジャンルは、県内だけでなく、県外からの観光客に対しても訴求力がありそうで、人気が出たら、並ぶのが大変だなあ、と、今から考えるのは杞憂かもしれないが、そんな未来を、希望を信じたいのは、日常を取り戻したいと心のどこかで願っているからかもしれない。



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「ごちそうさまでした!」


支払いは、クレジットカードで。


焼鳥屋のときの名残なのか、キャッシュレス決済に対応しているのは、ありがたい。


支払いを終え、店の外へ。相変わらず、夏は続いている。


「ひとりではできないことも、みんなでやればできるって、昔、誰かが言ってた気がする…誰だっけ?まあ、いいや」


ハヤマさんが、独り言のようにつぶやいた。


「このお店が生まれ変わったこともそうだけど、あのラーメンを構成しているあらゆるものが、この世界の誰かの手によって生み出されていて、そのどれか一つが欠けても、あの味は生み出せないんだよなあ。当たり前に思っていたことが、当たり前じゃないってこと、ここ一年くらいで痛いほどわかっていたつもりでいたけど、改めて、尊いものなんだなあ、って思うよ」


「…そうですね」


「どんな仕事でも、誰かの役に立っているはずだから、社会の歯車なんて揶揄されてもさ、そもそも歯車がなければ、誰も何もできないんだぜ?歯車上等!おいしいラーメンを食べるためだったら、いくらでも動いてやりますとも!…というわけで、午後もお仕事がんばろうか」

「はい!」

「…あ、そういえば、午後は病院に行くんだった。有給を行使します!課長によろしく!というわけで、ここで解散!お仕事がんばって!じゃあね!」

そういうと、ハヤマさんは、足早に駅のほうへ消えていった。

ボクは苦笑いしながら、空を見上げた。

まだまだ、夏は、続いていく。

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☆店舗情報☆

店名:鶏そばAkari

住所:山梨県甲府市丸の内2-3-7

電話:055-268-2455

営業時間:[月~土] 11:30~22:00

定休日:日



★ハヤマさんが食べたもの★

・濃厚鶏白湯そば 930円 

・至高の鶏そぼろ丼 300円


→中太麺とクリーミーな鶏白湯スープが織りなす癒し系白湯。
 デフォのトッピングは、地どりチャーシュー・鶏チャーシュー・味玉・
 紫玉ねぎ・かいわれ。
 特に、地どりチャーシューと味玉の完成度が高く、元焼き鳥屋さんのいい仕事っぷりを
 堪能できるぞ^^
 鶏そぼろ丼にも地どりチャーシューが乗ってるから、もはや何を食べても
 鶏の旨みしかないというね^^
 そぼろ丼と鶏白湯スープの組み合わせは、さらに中毒性があってヤバいぞ。
 ヤバいのは私の語彙力かもしれないが、おいしいので、お試しあれ^^

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